ダニは良いですぞ:個性豊かなダニたちの紹介
0. 前置き
この記事は、バーチャル理科おねえさん YUKIYAさんのアドベントカレンダーに寄稿します。
これを機にblogのタイトルを「ダニ道楽blog」に改め、放置気味だったblog更新を再開しようと思います。
今回は、2020年までのVTuber 八切ヤツメの活動を振り返りつつ、私の心を掴んで離さないダニの面白さをお見せしていきます。
1. 謎多きダニにアマチュアが挑む意味
ダニはクモと同じ節足動物門 鋏角亜門 に含まれます。
クモの遠い親戚ぐらいに思って頂ければ良いです。
鋏角亜門の中でのダニの分類学的な位置付けは今でも議論が続いており、確定していません。
また、そもそも日本においてダニが断片的な研究ではなく「ダニ学」として体系的に研究され始めたのは1960年以降であり、他の生物に対して大きく遅れを取っています。
さらに、肉眼での観測が難しいことも合間って、未発見の種も多く、毎年のように新種が報告される等、種レベルでも多くの発見が続いています。
さらにさらに、日本国内でも約2000種程度のダニが存在し、当然、それらの種ごとの細かい生態をみっちり研究するには人手が足りていません。
以上のように、ダニにはまだ不明点が多く残っています。
つまり、私みたいなアマチュアが活躍する場としてはこれ以上無いって事だあああ!
2. ダニの大分類に沿って、ダニを見て行こうゼ
ここでは便宜上、ダニを「ダニ目」という分類階級にまとめた場合を想定して話を進めます。
ダニ目の下位分類として、ダニ屋をやっていれば何度も登場する「亜目」単位での分類が登場します。
日本国内では、下記の5亜目が存在します。
2-1. マダニ亜目(大型で動物の血を吸うダニ)
今のところマダニは専門外なので写真は無しです。
この辺は来年以降の課題ということで。
2-2. トゲダニ亜目(吸血性または捕食性がメインのダニ)
トゲダニは見た目がそっくりなダニが多くて、このようなマクロ撮影では科レベルの同定すらも難しい事があります。
次は深度合成撮影で別のダニを見てみましょう。
ウデナガダニの仲間は土壌中の線虫を捕食することで知られています。
この恐ろしく長くて筋肉に乏しい腕は、センサーのような役割を果たすようです。
土壌中には多くのトゲダニ亜目の仲間が生息していますが、我々の住む家にもマヨイダニ科などの屋内性トゲダニ類が侵入してきています。
2-3. ササラダニ亜目(硬い外皮で身を固めた分解者がメインのダニ)
ササラダニ亜目は土壌中に多く存在するダニであり、ほとんどが生態系の中では分解者としての役割を果たしています。
種数はべらぼうに多く、とにかく同定しきれないダニです。
かつて私が発見した新種のダニも、ササラダニ亜目の一種です。
Ameronothrus属の新種だそうです!!!
— 八切ヤツメ (@yatsume_project) 2019年8月3日
どうしましょう。
VTuberでただ一人の、新種ダニを見つけた者になってしまいました。 https://t.co/yFmcTXASSR
新種記載論文はもう少々お待ちを。(新型コロナのせいで色々遅れてます)
さて、地味な子が続きましたが、見た目が派手なササラダニもいます。
ジュズダニ科の一種です。
全身からワックスを分泌し、脱皮した後の殻を背中に固定しています。
こんな格好いいダニを現実に見てしまったら、辞められるワケが無いですよ!
2-4. ケダニ亜目(タカラダニやハダニなどを含む)
みんな大好きカベアナタカラダニです。
春先から夏頃にかけて、コンクリートの壁を走り回っているアイツらです。
時々、こうやって植物の汁を吸ったり、花粉を食べている様子が観察できます。
ナガミヒナゲシの雄しべに群がって花粉を食べています。
次は、私をこのダニ沼に沈めたダニです。
クローバービラハダニです。
本種はメスだけの単為生殖で増殖し、「オスは自然界に存在しない」とされていました。
しかし、2019年3月、偶然にも私はクローバービラハダニのオスを発見し、その雌雄が交尾する様子を撮影するに至りました。
その後、2020年11月、植物寄生ダニを研究している流通経済大学の後藤先生に同定していただき、クローバービラハダニのオスである旨が確定しました。
本件の続報は、2021年3月ぐらいに、なんかします。
はい、まだ言えないので、はい、なんかします!
こういう発見があるから、ダニは面白いんですよ!!
2-5. ニセササラダニ亜目(祖先的な特徴を多く含む、比較的新しく設けられたグループ)
ニセササラダニ亜目は、ケダニ亜目とササラダニ亜目の中間のような特徴を持ち、背中の体節構造が退化していないなどの祖先的な形質が残っています。
体長は0.3mm程度と極めて小さく、動きは素早いので撮影・採集ともに苦労が絶えません。
来年以降、もっとも率先して採集していきたいグループです。
(2-6. コナダニ団)
コナダニはかつて、コナダニ亜目として「亜目」レベルの系統と考えられていました。
しかし、後の研究でササラダニ亜目の一系統である事が判明。
文献によってはコナダニ小目などの分類階級が割り振られている事もあります。
天 使 降 臨 !
コナダニの仲間も自然界では分解者が多いのですが、植物を食害するコナダニも多く報告されています。
イエニクダニは真冬の窓際のホコリの中を好むダニです。
探してみましょう。超絶可愛いです。
3. 最後に!
いかがでしたか?今回はダニについて調べてみました。まだ分からない事が多いですが、これからもダニから目が離せませんね。
はい。
かなり駆け足でしたが、個性豊かなダニたちの姿を見ていただけたと思います。
今回の企画を通して、ダニの面白さが皆様に多少なりとも伝わったなら幸いです。
とは言え、実際のところ私がダニを追い回している動機の大半は「楽しい」「面白い」「こいつら格好いい」といった気持ちによるところが大きいです。
私自身が誰よりもダニ学を楽しみながら活動していると言って差し支え無いでしょう。
まだまだ私は語りたいのですが、そういう情熱は日々のブログ更新やVTuber活動に傾けようと思います。
では、新種ダニの件とクローバービラハダニ♂の件、
続報を待たれよ!!